第12回 ダウンヒル開眼 (2003年8月)  こんにちは!今年は夏バテとは無縁で過ごせそうなランママです。元気の素 は緑黄色野菜。マラソン仲間が家庭菜園のトマトやピーマン、茄子、胡瓜など を差し入れてくださいました。息子はおやつ代わりに曲がりくねった胡瓜を丸 かじりしています。  しかし暑いですね。この時期、無理に走行距離を稼ごうとは思いません。平 日はいつもより短いジョグですませ、その分を芝生の丘を利用したヒルトレー ニングに充てています。走行距離を削ってでもこういったトレーニングに取り 組めるいいチャンスだと思います。そして週末は、やはり暑さを避けて山ラン を楽しんでいます。お盆休みも地元関西の妙見山、六甲山のほかに滋賀や静岡 にも遠征して山ランを堪能する予定です。  ところで「山ランが好き」=「坂道が好き」と思われがちですが、私はそう いうわけではありません。自然の中に身を置くことが好きなのです。風の音、 川のせせらぎ、鳥や虫の声、そして自分自身の息遣いに耳を傾けて進む山道な どは最高。舗装されたドライブウェイを行く時もありますが、やはり街の道路 とは違う「非日常の世界」が好きなのです。でもこういう条件を満たす場所は 山に登らなきゃあまり見つからないんですよね。決して坂道を求めて山へ行く わけではありません。  そもそも私、上り坂はともかく下り坂が苦手中の苦手でした。何年か前に 「君は標高差700mを走りきれるか!」がキャッチフレーズの「みかた残酷マ ラソン(兵庫県・6月)」に出場した時も、頂上はトップで通過したものの後 半の急な下りでどんどん抜き去られ、3位入賞で頂けるはずだった地元特産の 高級牛肉は泡と消えてしまいました(涙)。後に残ったのは太もも前の大腿四 頭筋のひどい筋肉痛(さらに涙)。下り坂の着地の際の大腿四頭筋は、重力の 影響を受けて平地や上り坂よりも強いエキセントリック収縮を強いられます。 エキセントリック収縮というのは筋が収縮しようとしているのに外力によって 引き伸ばされている状態で、過剰な伸展によって筋細胞や結合組織の微細な損 傷が起こりやすく、それが筋痛の原因のひとつとされています。  しかし一方でエキセントリック収縮はそれに続く強いコンセントリック収縮 を生み出す「伸張反射」のトリガーでもあります。筋は急激に引き伸ばされて いることを感知すると、それ以上引き伸ばされて断裂するのを防ぐため、次に は短縮するという反射を起こします。これが伸張反射。着地〜膝が曲がる(大 腿四頭筋が伸展)〜反射により大腿四頭筋が収縮(腿があがり膝が伸び る)・・・この繰り返しが走るという動作なんですね。この伸張反射によるパ ワーが効果的に発揮されるには、その直前に筋がいかにリラックスして引き伸 ばされるかが重要です。  実は私、苦手だった下り坂が最近うまく走れるようになりました。ダウンヒ ルランニング開眼です。それは「接地時間を短くしよう」とする意識から始ま りました。着地はフラットです。片足に長く乗らないことで、ブレーキが最小 限に抑えられてスピードに乗れるし、エキセントリック収縮による筋のダメー ジも軽くなりました。そしてこれは着地前の筋のリラックスにもつながりまし た。下り坂でも筋のダメージはない、痛くないことを学習したからか、以前と ちがって怖がらずリラックスして脚を次々前に出せるようになったのです。  よく「下り坂ではストライドを広げて」といいますが、ストライドを広げよ うとするあまり膝を伸ばし、つまり大腿四頭筋が緊張した状態で着地するのも、 先に述べた伸張反射を十分に活かす方法ではありません。ストライドは勝手に 伸びてくれるので、むしろ接地時間を短くしてピッチを維持しようと考えて走 っています。  これで下り坂も怖くなくなり、バンザイです。まあ、箱根や富士山の駅伝復 路に出場するわけでもなければ、わざわざ坂下りのトレーニングをする必要は ありません。でも下り坂の恐怖と失速を克服したことで、山ランを翌日の痛み もなく、楽しめるようになったのは収穫です。なんたって目的は坂じゃなくて 自然、ですから。 ・・・といいながら東京国際女子マラソンの入りの5キロに活かせるかな?な んてひそかにほくそえんでいるランママです。